三菱電機は、生産技術センター(兵庫県尼崎市)の物種武士氏(ものだね たけし)、竹山豪俊氏(たけやま ひでとし)と、群馬製作所(群馬県太田市)の茂木弘道氏(もてぎ ひろみち)、石田政義氏(いしだ まさよし)、須田剛氏(すだ つよし)が、日本溶接協会「溶接注目発明賞(第36回)」を同社として初めて受賞した。
溶接注目発明賞は、国内における工業の発展と国民生活向上に寄与した「注目に値すると認められる特許発明」の発明者に授賞される。
同発明は、同社の「家庭用エコキュート」の貯湯タンクの製造時における溶接工程で、強度不足や腐食の原因となる隙間部を完全に無くす連続的な溶接により、疲労強度を10倍以上向上したほか、隙間部での腐食解消による耐食性向上を実現し、製品の強度・耐食性を飛躍的に向上させる新工法として評価された。

☆受賞の経緯
エコキュートの貯湯タンクは、お湯の出入りに伴う圧力変動とお湯による腐食に長期間耐える必要があるため、高い強度と耐食性を持つ高級ステンレス材によって作られている。貯湯タンク製造にあたり、水の漏れない密閉容器とするためにステンレス材を溶接するが、この溶接部が強度・耐食性ともに最も弱い箇所となる。
発明では、この溶接部の強度・耐食性を飛躍的に向上することに成功し、今回の受賞に至った。

☆発明の概要
貯湯タンクは、半球状の部品2つと円筒状の部品1つから構成され、それぞれが全周溶接されている。
従来は、半球状の部品を円筒状の部品に潜り込ませるように全周はめ込み、重なり合った部分を溶接していた。
この工法では、はめ込みの生産性には優れるものの溶接部に隙間ができてしまい、この隙間部が強度不足や腐食の起点となっていた。
今回受賞した溶接工法では、それぞれの部品の先端に曲げ加工を実施し、全周引っ掛け構造とした。
この引っ掛け構造は、溶接前までは全周をはめ合わせる固定具として機能し、溶接時は全体を溶かすことで、それ自体が隙間を埋める溶接ワイヤの役割を果たし、継手の隙間部を橋脚することで溶接裕度に貢献する。
溶接後は隙間部のない連続的な溶接部となり、疲労強度は10倍以上に、耐食性はタンクの腐食要因となる隙間形状を完全に無くすことで、隙間部での腐食を解消することができる。